WORKS & NEWS

「CUEマン」という仕事

「CUEマン」という仕事

 

HSAに入社し音響部として働き始めて1年になります。
先日、hitaruオペラプロジェクトのプレ公演「蝶々夫人」で、初めてCUEマンを務めました。

「楽譜が読める」という理由で、舞台監督からご指名いただいたのですが、そもそも「CUE出し」の仕事自体もわからず、音響以外の劇場機構もよく理解できていないところからのスタートで、正直不安しかありませんでした。

稽古には音響の役割も兼ねて参加したので、演出に関しても、少しずつ理解できていたと思いますが、機構の動きに関しては全くイメージできておらず、そのまま迎えた初回の通し稽古では冒頭でいきなり失敗。その日はひとつもCUEを出せず、沈黙したまま終了しました。

これでは務まらないと焦り、それ以降は個人練習を重ね、ほぼ毎日原曲を聴きました。

そして挑んだ公演2週間前の通し稽古。
大きな失敗無く完走できたことで自信をつけ、無事に本番を終えることができました。

約半年間のプロジェクトを成功させた達成感と仕事を褒めていただいた嬉しさで、最終的には、楽しかったなと振り返ることが出来ました。

 

※CUE:操作など行動のきっかけを知らせる合図のこと(ラテン語のquandoの頭文字が語源)
※CUEマン:公演中、その合図を送る役割を担う人

 

 

hitaruオペラプロジェクト プレ公演「蝶々夫人」
舞台監督 齋藤玲さんより


2020年1月。

劇場研修に来た時の彼は、学生にしては少し大人びた感じの、落ち着いてはいるが特に積極的でなく、ニコニコしてはいるが大きな声を出すわけでもない、そんな彼をみて「飄然の人」という印象を抱きました。

 

その後、正式採用され、4月から音響唯一の若手として日々研鑽を積んでいた時、ひょんなことから彼が幼少時より音楽に慣れ親しんでいたことを耳にしました。

当時、主催事業オペラの演出部構成に悩んでいた私は、彼を全体のCUEマンとして迎え入れてみようと思い提案しましたが、周囲からは当然不安の声が…。
一方、当の本人は「まあ、いいですけど…」とまさに「飄然の人」らしい返答でした。

 

2021年1月8日
劇場にて初めての粗通し稽古。
CUEマンとしても初仕事の日でした。
どんな仕事ぶりを見せてくれるかと思っていましたが、その日は進行に全くついて来られず、彼に任せて大丈夫かな…と不安になったのは言うまでもありません。


しかし、彼が非凡なのは、ここからの努力にあります。


2月11日

劇場にて最終の通し稽古。
この日のCUE出しは、ほぼ完璧でした。
見えないところで献身的に作業を進めていたに違いありません。

2月14日に舞台の仕込みが始まり、16日にはリハーサルが行われました。
日増しに自信を深め精度を上げてゆく彼の仕事ぶりは、まさに羽化をする蝶を見るようでした。
その後も、演出に合わせ日々変化・追加されていくCUEに対応し、見事に本番までを乗り切ってくれました。
本番中、自信をもって仕事を遂行する彼の姿を見て、若人の成長の早さと無限の可能性を眩しく感じました。


―男子、三日会わざれば刮目して見よー


「飄然の人」は「努力の人」でありました。