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Creative Opera Mix  Vol.2 “LOVE & TRAGEDY”

Creative Opera Mix Vol.2 “LOVE & TRAGEDY”

2021年3月13~14日、札幌市民交流プラザ クリエイティブスタジオにて、札幌文化芸術劇場の主催事業「Creative Opera Mix Vol.2 “LOVE & TRAGEDY”」が開催されました。今回は、LEDテープライトという照明素材の特性を活かした床電飾の装置を作成したのでご紹介します。

 

はじめに、ステージエリアとなる部分(4間×4間/7,272mm×7,272mm)に長さ7mのテープライトを32本敷き詰め、それらを踏まないよう気を付けながら、スチールデッキ(鉄骨のステージ部材)を組みました。

 

通常、スチールデッキの天板は分厚い木製板ですが、今回はテープライトの光を透過させる必要があったため、木製板を取り外し、アクリル板に差し替えて設置しました。

床の電飾システムは下記のとおりです。

 

テープライトは、WS2811というマイクロコントローラーを内蔵した電圧DC12VのRGB LEDライトです。

 

1本5mのテープに、それぞれ150粒のLEDが付いています。
隣り合う3粒をひとつのグループとして、50スパンに分割して個別制御できます。
5mで50スパンなので、1スパンは10cmの長さになります。

 

そのテープライトを3本連結して15mにし、二つ折りにすることで2ライン分を賄っています。ステージの大きさは4間(約7.2m)なので、各ライン30cmは使用しないことになりますが、この方法で32ライン分用意しました。

テープライトの制御方法について、信号の流れを図にしました。

このテープライトはSPIという信号で制御するのですが、舞台照明では一般的に、DMXという信号を使用しているため、そのままでは調光卓から操作できません。
そこで、自作のコントローラを使い、DMX信号からSPI信号に変換しています。

調光卓は制御できるデータ量が決まっています。このデータ量の最小単位が「チャンネル」です。

 

LEDのRGBは「R」「G」「B」それぞれ1チャンネルずつ使用するので、1スパンにつき3チャンネル必要です。

 

つまり、合計で72スパン×32列×3チャンネル=6,912チャンネル必要になりますが、クリエイティブスタジオの調光卓(GrandMA2Light)単体では、ここまでのチャンネル数を制御できません。そこでクワテック株式会社の「SynVisum」というソフトで制御することにしました。

 

SynVisumは、画像や動画に様々な効果を加えたり新たに生成できるソフトです。
編集した画像や動画を、マス目状に並んだLEDに出力する機能が備わっています。
SynVisumで作成した各パターンを、調光卓から送られてくるDMX信号に紐づけました。

 

例えば、調光卓から送られてきた「チャンネル1」を、SynVisumから「パターン1」としてテープライトコントローラに送ります。この方法を用いることで、電飾パターンと調光卓のチャンネル数が同じ数となり、とても扱いやすくなります。

 

しかし、実際には、SynVisumからテープライトコントローラへのデータ量は6,000チャンネルを超えます。1系統のDMX信号は最大で512チャンネルです。
調光室からステージまで、DMX用の信号線を十数系統も引くのは現実的ではないので、「Art-Net」という照明用のイーサネット通信プロトコルを使用します

 

「Art-Net」は、DMX信号をイーサネットを介して送受信するための規格で、クリエイティブスタジオの設備では理論上、4,000系統のDMX信号を扱えることになっており、今回のデータ量も1系統のLANケーブルだけで容易に送信することができます。

 

上図に青いボックスが4つ描かれていますが、これは「DMXノード」と呼ばれる機材です。「DMXノード」は、SynVisumから送られてきたArt-NetをDMX信号に変換し、各コントローラに届けています。コントローラは、それをSPI信号に変換し、テープライトを制御しています。

 

今回のシステムでは、各コントローラは150スパン、DMXチャンネルとしては450チャンネル分のLEDを制御しました。

 

下図がSynVisumの画面です。
真ん中の雲画像の一番下3マスに映像が出力されていないのがわかるでしょうか。

 

ここが7.2mを超えるため使用しないスパンになります。使用しないとはいえSynVisumの制御下にあるので、発光させることは可能です。それも含めると、合計で75スパン×32列×3チャンネル=7,200チャンネル使用していることになります。

実際の作業工程をご紹介します。
LEDテープを設置しているところです。

システム図に電源詳細を書いていませんが、5mのLEDテープを3本連結すると電圧降下してしまうので、譜面灯の提灯ケーブルを流用して必要な場所にに直接電源供給しています。

テープライトは、扱いやすいようにケーブルモールに入れています。
スイッチング電源、DMXノード、コントローラが写っています。

 

 

スイッチング電源は、交流電源を直流電源に変換する装置で、今回は12V30A出力の製品を8台使用しています。

設置作業を終え、チェックしているところです。1本だけNGのテープライトがありました。



スチールデッキの上にアクリル板を載せているところです。テープライトを踏まないように作業するのは大変です。



完成した様子がこちらです。

不透明のシートを貼っているため、光源が透けることはありませんが、光量が落ち、全体的にぼんやりした印象です。もう少し光源と天板を近づけると良かったかもしれません。

透ける床でも面白かったのですが、今回は床にプロジェクターで映像を投影する必要があったので不透明な床にしました。

光量を上げるために、2台のプロジェクターを使い、2枚の絵をぴったりと重ねています。こちらはArkaosMediaMasterを使用して、調光卓でフィクスチャー制御しています。

 

フィクスチャー制御をすると複数の画像や動画を、ムービングライトのような感覚で自在に制御することができます。

 

思わぬ効果もあり、個人的には興味深い経験でした。

 

【Time lapse】
仕込みの様子をタイムラプス動画でご覧ください。